1) Stick-Slip 現象を利用した摩擦係数の測定
東海高等学校 1 年 南 光太郎 (1530045)
物体にばねを付けて引っ張ると固着と滑りを繰り返す振動(スティック−スリップ現象)を起 こすことがある。この振動の周期と1回の滑り距離から静止摩擦係数と動摩擦係数を求める
ことができる。実験では,物体にばねを取り付け,一定の速度でばねを引く装置を自作した。 また材料の組み合わせによりスティック−スリップ現象が起きないことも見出した。スティ
ック−スリップ現象から摩擦係数を求めるという発想はユニークであり,それを丁寧な実験 で実現したことを高く評価した。優れたレポートである。
岡山県立岡山朝日高等学校 1 年 沼本 真幸 (1543038) (共同実験)
紙やすりと様々な材料の組み合わせについて静止摩擦係数と動摩擦係数の測定を行い,表面 粗さと摩擦係数に一定の関係を見出した。その後,表面粗さと摩擦係数に関係があることか
ら,摩擦音から摩擦係数を推定できるのではないかと考えて摩擦音の測定を行った。測定で は表面微小部分の衝突による音波を捕え,摩擦係数が概算できるとの結論を得た。摩擦音に
着目する発想はユニークであり,丁寧な実験で摩擦係数が概算できることを示したことは重 要な結果である。優れたレポートである。
【実験優良賞(SA)】
1) 斜面を滑らせる物体の接触面積の大きさや質量と静止摩擦係数の関係
つくば市立竹園東中学校 2 年 杉浦 涼介 (1508008)
摩擦角を利用して摩擦係数を求める実験である。実験装置を自作し,滑らす物体の表面の性 質を一定とするために消しゴムを利用した。また多数回の測定について度数分布を示し,摩
擦の振舞いを分かりやすくまとめている。優れたレポートである。
2) 身のまわりの潤滑剤が摩擦特性に与える影響について
名取市立みどり台中学校 3 年 安藤 一真 (1504005)
潤滑材が摩擦係数に与える影響を調べた実験である。実験では潤滑材の種類によっては塗布 では摩擦係数は大きく変化せず,拭取りにより低下することを見出した。またステアリン酸
での実験ではアルミ板間の摩擦係数が大きく低下すること,また塗布により水滴の接触角が 大きく変化することを明らかにした。優れたレポートである。
筑波大附属高等学校 3 年 岩ア 光里(1514012)
斜面を利用して静止摩擦係数と動摩擦係数を丁寧に測定し,摩擦の法則の確認を行った。実 験の結果から「垂直荷重に比例する」,「見かけの面積に依存しない」という摩擦力の法則は,
物体が十分に大きいときに近似的に成り立つ法則であることを見出した。優れたレポートで ある。
4) 紙の摩擦係数の測定 東海中学校 3 年 小久保 裕生 (1530028)
ノートのページを交互に挟むと引き離すには大きな力が必要なことが知られている。実験で は紙の枚数を変えながら測定を行い,摩擦力は紙の枚数に対して2次関数として変化するこ
と,適当な紙の質量を考えることで摩擦係数も紙の枚数に依らず一定となることを明らかに した。湿度や時間変化についても調べてあり,優れたレポートである。
三重県立四日市高等学校 3 年 今西 優果 (1531005) (共同実験)
6) 摩擦係数に寄与する要因の考察 −表面粗さ・物質・荷重・摩耗・潤滑剤による表面状態の変化−
三重県立四日市高等学校 3 年 岡本 直大(1531007)(共同実験)
7) 傾斜法による静止摩擦係数・動摩擦係数の測定 −物質・表面粗さ・粗さ方向と摩擦力の関係−
三重県立四日市高等学校 3 年 中村 史香(1531027)(共同実験)
8) 小型回転ステージを用いた静止摩擦係数・動摩擦係数の測定 −接触面状態・潤滑剤と摩擦係数の関係−
三重県立四日市高等学校 3 年 丹羽 英人(1531030)(共同実験)
静止摩擦係数の測定は摩擦角を利用し、動摩擦係数の測定はスマートフォンの動画撮影を利用 した。特に静止摩擦係数では物体のすべりの開始を明らかにするためのスイッチ回路が設けた。
表面粗さなどの様々な条件を変えながら実験を行い,例えば摩耗により摩擦力が変化すること を明らかにした。力作であり,優れたレポートである。
三重県立四日市高等学校 3 年 冠野 仁志 (1531011)(共同実験)
10) ビデオ撮影による静止および動摩擦係数の測定 −表面粗さと摩擦係数の関係−
三重県立四日市高等学校 3 年 岸本 昌和 (1531012)(共同実験)
11) ビデオ撮影による摩擦現象の観測 −表面粗さと摩擦係数の関係−
三重県立四日市高等学校 3 年 近藤 暖(1531017)(共同実験)
12) ビデオ撮影によるすべり摩擦係数の測定
三重県立四日市高等学校 3 年 中島 優斗(1531025)(共同実験)
物体の取り付けた糸を引くときに,力を測定すると同時にビデオ撮影を行うことで摩擦力の時 間変化を測定した実験である。さまざまな条件で実験を行い,表面粗さと摩擦力の関係,引っ
張りの時間経過と摩擦力の変化などを調べた。力作であり,優れたレポートである。
動摩擦係数を減衰振動から求めた実験である。ばねにつながれた物体が振動をするとき,摩 擦力を受けることで振動が減衰する。その周期と振幅から動摩擦係数を求めることができる。
丁寧な実験を行っており高く評価した。実験結果をグラフして表現するなどまとめ方を工夫 すればさらに優れたレポートとなるであろう。優れたレポートである。
岡山県立倉敷天城高等学校 2 年 北濱 駿太 (1541004)(共同実験)
15) 3種類の運動系における理論式導出とそれによる静止摩擦係数および動摩擦係数の実験的導出
岡山県立倉敷天城高等学校 2 年 末長 祥一(1541007)(共同実験)
複数の方法で摩擦係数を測定した実験である。ばねばかりを利用した方法では動画でばねの伸 びを調べて静止摩擦係数と動摩擦係数を求めた。またオイラーのベルトを利用して静止摩擦係
数の測定も試みた。これらの実験から見かけの面積との静止摩擦係数の関係を調べ,見かけの 面積に依らないことを明らかにした。優れたレポートである。
岡山県立岡山朝日高等学校 1 年 安藤 貴政(1543002)(共同実験)
紙やすりと様々な材料の組み合わせについての静止摩擦係数と動摩擦係数を丁寧に測定した 実験である。実験から動摩擦係数の速度依存性を見出している。また,速度依存性の起こる
仕組みについて議論している。優れたレポートである。
底面が一様でない場合の静止摩擦係数の実験である。分割した底面の一部のみに接触面とし た実験,分割した底面の一部を異なる材料とした実験を行った。例えば,異なる材料とする
実験では変えた面積に比例して静止摩擦係数が増加する。しかし,増加は形状により異なる ことを明らかにした。優れたレポートである。
18) 管摩擦係数の測定 愛媛大学附属高等学校 3 年 青野 舞奈(1548002)
管を流れる流体は圧力差と管壁からの摩擦より流量が決まる。実験ではシリコンチューブと の内径と長さを変えて管摩擦係数の測定を行った。管摩擦係数は一定ではなく,長さによっ
て多少変化することを明らかにした。実験結果をグラフにもとめ,理論的予想と比較するこ とを行うことでさらに優れたレポートになるであろう。優れたレポートである。
【楽しんだで賞(審査員特別賞)】
京都教育大学附属高等学校 1 年 田上 大喜(1533018)(共同実験)
2) 摩擦係数の測定による「おむすびころりん」が実現可能であるかどうかの検証
京都教育大学附属桃山中学校 2 年 田上 千笑(1533019)(共同実験)
「おむすびころりん」の昔話を題材とした研究である。絵本にあるさまざまな形のおにぎりを 斜面に置いて運動を始める角度や運動の速さを求め,おじいさんがおむすびに追いつけない条
件があることを見つけている。題材もユニークであるが,同時にレポートの完成度も高い。優 れたレポートして,審査員特別賞(楽しんだで賞)とした。